コラム

「物流費を分析したいけれど、必要なデータがそろっていない」
「委託先ごとに明細の形式が違い、集計できない」
「物流データを管理するために、新しいシステムを導入した方がいいのか分からない」

物流費の見える化を進める際、このような課題を抱えている企業は少なくありません。

しかし、実際にはデータそのものが存在しないのではなく、すでに社内にあるデータを集計できていないケースもあります。

物流費を把握するために、最初から大規模なシステムを導入する必要はありません。

まずは現在保有しているデータを整理し、物流費と物量の関係を見える状態にすることが重要です。

物流費の基本的な考え方や、物流費率と物流原価の違いについては「物流費とは?物流費率と物流原価の違い|正しいコスト管理の考え方」で詳しく解説しています。


物流費を分析するために、まず確認したいのが次の4つのデータです。

① 運賃明細・請求書
輸送費や委託先別の費用を把握するためのデータです。方面別・車格別・便別などに整理することで、輸送費の内訳を確認しやすくなります。

② 入出庫記録・在庫データ
保管量や在庫回転、入出庫の実績などを把握できます。保管費と物量の関係を見るために重要なデータです。

③ 勤怠・作業日報
倉庫作業などにどれくらいの人時がかかっているのかを把握できます。作業量と人件費を比較する際に活用できます。

④ 出荷伝票・受注データ
出荷件数や出荷行数、重量、納品条件などを確認できます。物流費を「1件あたり」「1行あたり」などの単位で見るための基礎となります。

これらを組み合わせることで、物流費の全体像を把握するための土台を作ることができます。

4つの物流データで物流費を把握する方法と集計前の定義

データを集める前に重要なのが、社内で定義を統一しておくことです。

たとえば、「出荷1件」といっても、伝票単位なのか、届け先単位なのかによって件数は変わります。

物流費についても、委託先によって明細の形式や費目の名称が異なる場合があります。

最低限、次のような項目はあらかじめ決めておきます。

出荷1件の定義/費目の分類/締め日の扱い/附帯費用の扱い

定義を決めないまま集計を始めると、後から数字を比較できなくなり、集計そのものをやり直すことになりかねません。

「データを集めること」より先に、「何を同じ数字として扱うのか」を決めることが重要です。


物流費を見るときは、総額だけではなく、費用を機能別に分けて確認します。

元資料では、物流費の内訳として**輸送費55.1%、保管費16.9%、その他28.0%**という構成が示されています。

「その他」には、包装費・荷役費・物流管理費などが含まれます。

物流費をひとつの金額として見るのではなく、輸送・保管・荷役・管理などに分けることで、どこでコストが発生しているのかを把握しやすくなります。


必要なデータと定義が決まったら、次は過去12か月分のデータをひとつの表にまとめます。

最低限そろえたいのは、

年月/物量/費用/人時

です。

物量は出荷件数・出荷行数・重量・個口数など、費用は輸送費・保管費・荷役費・附帯費・物流管理費などに分けます。

人時についても、直雇用・派遣・委託など、物流業務に投入されている工数を整理します。

整理した物流データを継続的な改善につなげるためには、自社の物流課題に合ったKPIを設定することも重要です。代表的な物流KPIや設定方法については「物流KPIとは?代表的な指標と設定方法|経営と現場をつなぐKPI設計」で詳しく解説しています。

12か月分の物流データを1つの表にまとめる方法

最初から完璧なデータをそろえる必要はありません。

まず1〜2週目で、出荷1件の定義や費目の分類、締め日の扱いなどを決めます。

3〜6週目で、過去12か月分の運賃明細・出荷実績・勤怠などを同じ形式に整理します。

7〜9週目では、物量と費用の月が合っているかを確認し、数字の差が発生している理由を確認します。

そして10〜12週目で、1件あたり物流費や1行あたり物流費などの単位コストを算出し、推移を確認できる状態にします。

最初の1か月は整理に時間がかかるかもしれません。

しかし、一度フォーマットと定義を決めれば、その後は毎月データを追加していく運用に変えられます。


物流データを見える化したいからといって、最初から新しいシステムを導入する必要はありません。

まず現在保有しているデータを集め、定義を統一し、12か月分をひとつの表にまとめてみる。

そうすることで、

何のデータが足りないのか
どの作業に時間がかかっているのか
どこを自動化すべきなのか

が見えてきます。

そのうえでシステム導入を検討した方が、必要な機能も明確になります。

新しいシステムを入れる前に、まず1本の表を作る。

これが物流データの見える化を進める第一歩です。


物流データの見える化シリーズ

物流改善を進めるためには、データを集めるだけでなく、正しい指標で把握し、分析・可視化し、改善につなげていくことが重要です。

本シリーズでは、物流データを改善や意思決定に活用するための考え方を、全5回にわたって解説します。

第1回|売上高物流コスト比率だけでは見えない「単位あたり物流費」
第2回|手元のデータから物流費を把握する方法
第3回|物流ABCで作業ごとの単価・原価を把握する方法
第4回|月次レポートで物流データを意思決定につなげる方法
第5回|物流データ基盤を整備し、自動化するまでの進め方

※第3回以降は順次公開予定です。



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