コラム

最低賃金や人件費の上昇を背景に、倉庫業務の委託先から値上げを求められるケースが増えています。

しかし、値上げ要請を受けた際に、提示された金額だけを見て「受け入れる」「断る」と判断するのは適切ではありません。

まず確認したいのは、現在の契約内容と実際の業務にズレがないかという点です。

特に庫内委託では、「業務範囲」「業務量」「単価」の3つを整理することで、値上げの妥当性を判断しやすくなります。


倉庫内の業務を委託しているものの、契約書は数年前に締結した内容のまま。

こうした状態では、委託先から値上げの相談があっても、何に対する値上げなのかを正確に判断できません。

値上げ協議を始める前に、まず次の3点を整理します。

「入出庫および付随する業務」といった曖昧な記載ではなく、

どの作業を、どの品質水準で、どこまで行うのか

を具体的に整理します。

「付随する業務」という表現だけでは、契約当初には想定していなかった作業が少しずつ増え、いつの間にか委託先の負担が大きくなっている可能性もあります。


次に確認するのが、契約単価の前提となっている業務量です。

月間の入庫数・出荷行数・個口数など、契約時に想定していた物量を整理します。

さらに、想定した業務量を超えた場合に、

「追加費用が発生するのか」「どのように単価を見直すのか」

といったルールまで決めておくことが重要です。

物量が増えているにもかかわらず単価を据え置いたままでは、委託先の負担だけが増え、結果として大幅な値上げにつながることもあります。


単価についても、「1時間○円」「1作業○円」といった金額だけを見るのではなく、その内訳を確認します。

人時単価であれば、賃金だけではなく、

法定福利費・採用費・職場環境費・一般管理費・利益

などが含まれている場合があります。

値上げの根拠を確認できる状態にしておくことで、単純な価格交渉ではなく、どの費用がどの程度上昇しているのかを踏まえた協議ができるようになります。


庫内業務を外部へ委託する場合、もう一つ確認しておきたいのが、現場での指示系統です。

契約上は業務委託になっていても、発注側の社員が委託先の作業者に対して、

「この作業からやってください」
「今日は残業してください」
「この人をこちらの作業に配置してください」

など、日常的に直接指示を出している場合は注意が必要です。


業務委託では、作業の順序や方法、労働時間、作業者の配置などについて、受託側が自ら管理できる体制を整えることが重要です。

そのため、発注側から何か依頼や変更がある場合は、現場の作業者一人ひとりへ直接伝えるのではなく、受託会社の責任者へ指示系統を一本化することがポイントになります。

契約書を整えるだけではなく、実際の現場運用まで確認しておきましょう。


値上げの相談を受けてから慌てて資料を集めるのではなく、普段から判断材料を整理しておくことで、交渉を進めやすくなります。

特に準備しておきたいのは、次の4つです。

① 業務量の実績
直近12カ月の入庫数・出荷行数・個口数などを整理し、物量がどのように変化しているのかを把握します。

② 範囲外作業の一覧
契約書に記載されていない作業が発生していないか、その内容と頻度を確認します。

③ 下げられる余地
出荷締め時間の分散、まとめ出荷、梱包方法の簡素化など、業務そのものを減らせる部分がないかを検討します。

④ 改定条件
どのような変化が起きた場合に単価を見直すのか、次回以降の価格改定ルールもあらかじめ決めておきます。


必要な情報を整理したら、値上げ要請の内容を確認します。

重要なのは、すべての値上げを一律に受け入れる、あるいは一律に断るのではなく、その要因を分けて判断することです。

最低賃金の上昇など外部要因が明確で、業務量や作業範囲も契約時から大きく変化していない場合は、改定の根拠を確認したうえで協議します。

この場合、今回の条件だけでなく、次回どのような場合に価格を見直すのかまで契約上明確にしておくことが大切です。


契約当初より業務量が増えていたり、範囲外の作業が常態化していたりする場合は、単純に単価だけを交渉するのではなく、業務そのものを見直します。

作業範囲を整理したり、業務を効率化したりすることで、単価が上昇しても委託費全体の増加を抑えられる可能性があります。


値上げの根拠が明確でない、あるいは対象となる作業が特定されていない場合は、その場で受け入れる必要はありません。

まずは単価の内訳や値上げ対象となる業務について、委託先に提示を求めます。

ポイントは、単純に「断る」のではなく、判断に必要な材料をそろえるために一度差し戻すことです。


委託費の値上げというと、どうしても「単価をいくらまで下げられるか」という交渉になりがちです。

しかし、本当に見るべきなのは単価だけではありません。

たとえば、

不要な作業をなくす
範囲外業務を整理する
出荷方法を見直す
梱包を簡素化する
作業量そのものを減らす

といった改善によって、単価を無理に抑えなくても、委託費全体を適正化できる場合があります。


人件費や最低賃金の上昇など、自社や委託先だけではコントロールできない外部要因があります。

一方で、業務量の増加や作業範囲の拡大、非効率な運用などは、見直せる可能性があります。

だからこそ値上げ要請を受けたときは、金額だけを見るのではなく、

「業務範囲」「業務量」「単価」

の3点から現状を整理することが重要です。

外部要因は受け入れ、内部要因は交渉する。

値上げを断ることから始めるのではなく、まずは業務量や作業範囲を下げられる余地がないかを確認することが、庫内委託費を適正化する第一歩です。


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