物流データを見るとき、最初に何を見るべきか
物流改善を進めるためには、まず自社の物流がどのような状態にあるのかをデータで把握する必要があります。
物流費を確認するとき、多くの企業で使われている指標のひとつが「売上高物流コスト比率」です。
業界平均と比較し、自社の物流費が高いのか、低いのかを見るためには便利な指標です。
しかし、売上高物流コスト比率だけを見て、物流の状態が改善しているかどうかを判断するのは注意が必要です。
物流データを改善につなげるためには、「率」だけではなく、物流量に対してどれくらいのコストが発生しているのかを見ることが重要です。
物流費の基本的な考え方や、物流費率と物流原価の違いについては「物流費とは?物流費率と物流原価の違い|正しいコスト管理の考え方」で詳しく解説しています。
売上高物流コスト比率とは?
売上高物流コスト比率とは、売上高に対して物流コストがどの程度発生しているかを示す指標です。
一般的には、次のような考え方で算出します。
売上高物流コスト比率 = 物流コスト ÷ 売上高 × 100
業界平均との比較や、自社の物流コストの推移を確認するために利用されます。
一方で、この指標には注意点があります。
それは、分母が「売上高」であることです。
売上が伸びれば、物流費そのものが増えていても物流コスト比率は下がって見えることがあります。
反対に、売上が落ちれば、物流の運用が何も変わっていなくても物流コスト比率は上昇します。
つまり、売上高物流コスト比率は物流の状態だけではなく、売上の動きにも影響される指標なのです。
業界平均だけでは、自社の物流の変化は分からない
2025年度の売上高物流コスト比率は5.32%でした。
前年度の5.44%から0.12ポイント低下しています。
しかし、2年連続で回答した135社を見ると、物流コスト比率が上昇した企業は51.1%、低下した企業は48.9%と、ほぼ半々に分かれています。
つまり、業界平均が下がっているからといって、自社の物流コストも改善しているとは限りません。

業界平均は、自社の立ち位置を確認するためのひとつの参考にはなります。
ただし、物流改善の判断をするためには、平均との比較だけではなく、自社の物流量と物流費の関係を継続的に見ることが重要です。
物流費は「率」だけでなく「単位あたり」で見る
そこで確認したいのが、「単位あたり物流費」です。
たとえば、
- 1件あたり物流費
- 1件あたり輸送費
- 1行あたり庫内費
- 1トンあたり物流費
- 1パレットあたり物流費
などです。
売上高ではなく、実際に動いた物量を分母にすることで、物流の変化をより具体的に把握できるようになります。
「物流費が増えた」という結果だけではなく、
物量が増えたから物流費が増えたのか
単価そのものが上昇したのか
物流条件が変化したのか
といった原因を考えやすくなります。
こうした物流データを継続的に管理・改善するためには、適切なKPIを設定することも重要です。代表的な物流KPIや設定方法については「物流KPIとは?代表的な指標と設定方法|経営と現場をつなぐKPI設計」で詳しく解説しています。
「何あたり」で見るかは、業態や荷物によって変わる
単位あたり物流費を見るときに重要なのが、何を分母にするかです。
すべての企業が同じ指標を使えばよいわけではありません。
小口多頻度の出荷が多い企業であれば「1件あたり」、多品種少量の庫内作業を見るのであれば「1行・1ピースあたり」、重量物を扱う企業であれば「1トンあたり」など、業態や荷物によって適した分母は変わります。

まず最低限そろえたいのは、物流費と物量の2つのデータです。
物流費は、運賃・保管費・荷役費・附帯費・物流管理費などに分けます。
物量は、出荷件数・出荷行数・重量などを月次でそろえます。
そのうえで、まずは「1件あたり物流費」「1件あたり輸送費」「1行あたり庫内費」など、自社にとって重要な指標から確認していきます。
物流データは「見る」だけでなく、改善につなげる
物流データを見える化する目的は、数字を並べることではありません。
重要なのは、数字の変化から物流の課題を見つけ、次の改善につなげることです。
また、KPIは数値を確認するだけではなく、異常や変化を捉え、具体的な意思決定や行動につなげることが重要です。「物流KPIは『見る』だけでは変わらない|意思決定と行動につなげるKPI設計」では、KPIを実際の改善活動につなげる考え方を紹介しています。
売上高物流コスト比率は、業界との比較や対外的な説明に活用できます。
一方、社内で物流改善を進めるためには、物量を基準とした単位あたり物流費もあわせて確認することで、物流の変化をより具体的に捉えやすくなります。
「率」と「単価」の両方を見る。
ここから、物流データの見える化を始めてみてください。
物流データの見える化シリーズ
物流改善を進めるためには、データを集めるだけでなく、正しい指標で把握し、分析・可視化し、改善につなげていくことが重要です。
本シリーズでは、物流データを改善や意思決定に活用するための考え方を、全5回にわたって解説します。
第1回|売上高物流コスト比率だけでは見えない「単位あたり物流費」
第2回|手元のデータから物流費を把握する方法
第3回|物流ABCで作業ごとの単価・原価を把握する方法
第4回|月次レポートで物流データを意思決定につなげる方法
第5回|物流データ基盤を整備し、自動化するまでの進め方
※第2回以降は順次公開予定です。
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