2026年4月から、改正物流効率化法に基づく特定事業者への規制的措置が施行されました。一定規模以上の荷主企業には、物流統括管理者(CLO)の選任や中長期計画の提出に加え、物流効率化に向けた取組状況を毎年度報告する「定期報告」が求められます。
2026年度に特定荷主として指定された企業の場合、初回の定期報告期限は2027年7月末です。
しかし、定期報告は提出直前に資料をまとめるだけでは対応できません。荷待ち時間や荷役等時間の計測、改善施策の実施状況など、日常的な物流データの記録が必要になるためです。
本記事では、物流効率化法における定期報告の対象企業、報告内容、提出期限、計測方法、年間スケジュールを解説します。
物流効率化法の定期報告とは?
物流効率化法の定期報告とは、特定事業者が物流効率化に向けた取組状況や改善実績を、毎年度、所管行政機関へ報告する制度です。
物流効率化法では、トラックドライバーの負荷軽減や物流の持続可能性を確保するため、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮、積載効率の向上などが求められています。
定期報告は、こうした取組が実際にどの程度進んでいるかを確認する役割を持ちます。
定期報告の対象となる企業
定期報告の義務は、物流効率化法に基づき指定された特定事業者に課されます。
主な対象には、以下の事業者が含まれます。
- 特定第一種荷主・特定第二種荷主
- 特定連鎖化事業者
- 特定貨物自動車運送事業者
- 特定倉庫業者
荷主企業の場合、原則として年間取扱貨物重量が9万トン以上であることが、特定荷主の指定基準となります。
なお、事業者区分によって報告様式や記載事項は異なります。本記事では、主に特定荷主の定期報告について解説します。
定期報告の提出期限と対象期間
特定荷主の定期報告は、指定を受けた翌年度から毎年度7月末日までに提出します。
2026年度に指定された場合の初回報告は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初回提出期限 | 2027年7月末 |
| 報告対象期間 | 2026年4月~2027年3月 |
| 報告様式 | 定期報告書(様式第5) |
| 提出方法 | 原則としてe-Gov電子申請 |
| 主な報告内容 | 判断基準の遵守状況、その他の取組、荷待ち時間等の状況 |
特に注意したいのは、報告対象期間が4月から翌年3月までであることです。
7月になってから計測を始めても、対象年度の実績を十分に把握することはできません。
定期報告に対応するためには、年度の初めから計測方法と記録体制を整えることが重要です。

定期報告で報告する3つの事項
特定荷主の定期報告では、主に次の3つの事項について報告します。
1. 判断基準の遵守状況
物流効率化法で定められた判断基準について、自社の取組状況をチェックリスト形式で報告します。
例えば、以下のような取組が対象となります。
- トラックの積載効率向上に向けた取組
- 荷待ち時間を短縮するための取組
- 荷役等時間を短縮するための取組
- 物流事業者や取引先との連携
- 物流効率化に向けた社内体制の整備
取組を実施していない場合も、必要に応じてその理由を整理することが求められます。
そのため、改善施策の実施記録だけでなく、社内会議の議事録や物流事業者との協議内容なども残しておくことが有効です。
2. 判断基準以外に実施した措置
判断基準に列挙された事項以外にも、物流効率化に向けて独自の取組を実施している場合は、その内容を報告できます。
例えば、以下のような取組が考えられます。
- 物流拠点間の共同配送の検討
- 配送ルートや納品条件の見直し
- 物流データの一元管理
- 物流KPIの可視化
- 物流改善に向けた部門横断的な取組
こうした取組は、実施した内容だけでなく、目的や進捗状況、改善効果を記録しておくことで、報告時の整理が容易になります。
なお、様式上、判断基準以外に実施した措置は任意記載事項です。
3. 荷待ち時間・荷役等時間の計測結果と改善状況
定期報告で特に準備が必要となるのが、荷待ち時間や荷役等時間の計測結果です。
荷待ち時間とは、トラックが貨物の積込みや取卸しなどを開始するまでに待機している時間を指します。
荷役等時間とは、貨物の積込み・取卸しや関連する附帯業務などに要する時間です。
報告では、計測対象として選定した施設や期間、計測結果などを整理します。
例えば、ある物流拠点の月別平均時間が次のように推移したとします。
| 月 | 荷待ち・荷役等時間の合計 |
|---|---|
| 4月 | 120分 |
| 5月 | 112分 |
| 6月 | 130分 |
| 7月 | 106分 |
| 8月 | 92分 |
| 9月 | 84分 |
※数値は説明用の仮データです。
この例では、6月に130分まで増加した後、9月には84分まで短縮しています。
このように月別の推移を可視化することで、改善状況を把握しやすくなります。
ただし、実際の定期報告では、荷待ち時間と荷役等時間を原則として区分し、所定の方法に従って計測・報告する必要があります。
荷待ち時間・荷役等時間の計測方法
計測対象となる施設の選び方
定期報告では、すべての物流拠点・すべての運行を必ず計測しなければならないわけではありません。
実効性を確保することを前提として、一定の条件に基づくサンプリングが認められています。
対象施設については、取扱貨物重量の大きい施設や、実態を把握すべき施設を選定します。
また、対象施設を選んだ理由も報告に必要です。
そのため、施設名や所在地だけでなく、取扱貨物重量、選定理由などを整理しておくことが重要です。
計測期間と対象運行
サンプリングによる計測を行う場合、原則として四半期ごとに連続した5営業日以上を対象とするなど、所定の基準があります。
また、対象施設で計測する運行についても、原則として対象期間中のすべての運行を把握する考え方が示されています。
計測にあたっては、以下のような情報を記録しておくと管理しやすくなります。
- 対象施設と計測日
- トラックの受付時刻
- 荷役等の作業開始時刻
- 作業終了時刻
- 荷待ち時間・荷役等時間
- 計測対象の選定理由
記録方法や対象範囲を統一することで、拠点間の比較や月別の改善状況の把握にも活用できます。
計測データを改善活動につなげる
計測の目的は、報告書に数値を記入することだけではありません。
例えば、特定の曜日や時間帯に荷待ち時間が長くなる場合、トラックの到着集中や作業人員の配置などに課題がある可能性があります。
計測結果を分析することで、予約受付の見直し、作業時間の調整、出荷計画の改善など、具体的な対策を検討できます。
計測・分析・改善・効果検証を継続することが、物流効率化の実現につながります。
定期報告に向けた年間スケジュール

定期報告への対応は、提出期限から逆算して進めることが重要です。
2026年度に特定荷主として指定された企業を例に、年間スケジュールを整理します。
| 時期 | 主な対応 |
|---|---|
| 2026年4月頃 | 計測対象・計測方法・記録体制の整理 |
| 2026年4月~2027年3月 | 荷待ち時間等の計測、取組状況の記録 |
| 2027年4月~6月 | 年間実績の集計、改善状況の整理 |
| 2027年7月末まで | 定期報告書の提出 |
※上記は実務上の準備スケジュール例です。
4月から計測方法を決めておく
年度初めには、どの施設で、どの期間に、何を計測するかを明確にします。
特に重要なのは、計測ルールを統一することです。
拠点によって受付時刻や作業開始時刻の定義が異なると、正確な比較が難しくなります。
また、誰が記録し、誰が確認するのかという管理体制も決めておく必要があります。
毎月の実績を記録・集計する
日々の計測データは、月次で集計することが効果的です。
月ごとの平均時間や改善施策の進捗を確認することで、課題を早期に把握できます。
年度末にまとめて集計するのではなく、毎月の物流KPIとして管理することが望ましいでしょう。
7月は報告書の取りまとめに集中する
4月から6月にかけて年間実績を整理しておけば、7月は報告内容の確認や提出手続に集中できます。
逆に、7月になってから過去の実績を収集し始めると、記録の不足や計測方法の違いが判明し、対応に時間を要する可能性があります。
報告業務を効率化するためには、日常業務の中で必要なデータが蓄積される仕組みが重要です。
定期報告でよくある不備と対策
定期報告では、次のような準備不足に注意が必要です。
荷待ち時間を計測していない
計測を開始していない場合、過去の実績を正確に把握することが難しくなります。
対策として、対象施設と計測方法を早期に決定し、継続的な記録体制を構築することが重要です。
計測対象の選定理由が不明確
なぜその施設や期間を計測対象にしたのか説明できない場合、報告内容の整理に支障が生じます。
対象施設の取扱貨物重量や業務特性など、選定根拠を記録しておきましょう。
中長期計画と実績の対応関係が整理されていない
中長期計画に記載した目標と、実際の改善状況を比較できないケースも考えられます。
計画で設定したKPIと日常的に管理するKPIの単位・定義をそろえることで、進捗状況を把握しやすくなります。
報告業務が特定の担当者に依存している
データの収集方法や集計手順が担当者個人に依存していると、異動や退職によって業務が継続できなくなる可能性があります。
記録様式や集計ルールを標準化し、複数の担当者が確認できる管理体制を整えることが重要です。

物流効率化法への対応では、定期報告だけでなく、中長期計画の策定と進捗管理も重要です。具体的な計画の立て方については、関連記事「物流中長期計画の策定方法」もあわせてご覧ください。
物流データの可視化で定期報告業務を効率化する
定期報告への対応では、複数の物流拠点や物流事業者からデータを収集する必要が生じる場合があります。
しかし、データがExcelや各種システムに分散していると、集計や比較に多くの時間を要します。
そこで重要になるのが、物流データの一元管理と可視化です。
物流KPIを継続的に把握する
荷待ち時間や荷役等時間を月次で可視化することで、改善状況を把握しやすくなります。
さらに、積載率や配送効率などの指標と組み合わせることで、物流全体の課題を分析できます。
物流KPIの設定方法や代表的な指標については、関連記事「物流KPIとは?代表的な指標と設定方法」で詳しく解説しています。また定期報告に必要な物流データを継続的に管理するためには、データ基盤の整備も重要です。具体的な進め方については、関連記事「物流データ基盤の作り方とは?データ整備の4段階とシステム導入の判断基準」で詳しく解説しています。
LOGIENCE COMPASSによる物流データの可視化
LOGIENCE Consultingが独自開発した「LOGIENCE COMPASS」は、物流に関するデータを一元化し、可視化から改善課題の抽出、実行管理までを支援するシステムです。
荷主企業では、物流拠点や輸送に関するデータを整理し、物流KPIの推移や改善状況を把握するために活用できます。
また、計画に対する実績を継続的に確認することで、経営層と物流現場が共通の指標に基づいて改善活動を進めやすくなります。
定期報告に必要な情報を整理するうえでも、日常的に物流データを蓄積・分析できる環境は有効です。
※法定の定期報告書の自動作成・提出機能を保証するものではありません。
▼LOGIENCE COMPASSの詳細はこちら
まとめ|定期報告は毎月の記録が重要
物流効率化法に基づく定期報告では、判断基準への取組状況や荷待ち時間等の計測結果を、毎年度報告する必要があります。
2026年度に特定荷主として指定された企業の初回提出期限は、2027年7月末です。
対応にあたって重要なのは、次の3点です。
- 年度初めに計測対象と記録方法を決める
- 荷待ち時間等の実績を継続的に把握する
- 中長期計画と実績を結び付けて改善状況を管理する
定期報告は、単なる行政手続ではありません。
日々の物流データを整理し、改善状況を把握することは、物流コストの適正化や輸送効率の向上にもつながります。
報告のための作業を増やすのではなく、毎月の記録をそのまま報告に活用できる仕組みを構築することが重要です。
物流管理の仕組みづくりを無料で相談
LOGIENCE Consultingでは、物流データの可視化や物流KPIの設計、物流管理体制の構築など、企業の物流課題に応じた改善を支援しています。
「定期報告に向けて何から始めればよいか分からない」「荷待ち時間の計測方法を整理したい」「中長期計画と実績管理をつなげたい」といった課題についても、ご相談いただけます。
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参考資料
- 国土交通省「物流効率化法について(荷主・物流事業者の皆様へ)」
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_mn1_000034.html - 国土交通省「物流効率化法 理解促進ポータルサイト|定期報告」
https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/regular-report/ - 国土交通省「定期報告書(様式第5)記載ガイド」
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001976791.pdf
