コラム

物流中長期計画の作成と目標設定のイメージ
物流中長期計画の策定から定期報告までの流れ

物流中長期計画とは、自社の物流における現状や課題を整理し、今後どのような改善に取り組むのかを中長期的な視点で具体化する計画です。

物流効率化法では、一定規模以上の「特定事業者」に対して、判断基準を踏まえた物流効率化の取り組みに関する中長期計画の作成・提出が求められています。

計画では、単に「物流を改善する」「荷待ち時間を減らす」といった方針を示すだけではなく、現状を把握したうえで、

・どのような施策を実施するのか
・何を目標とするのか
・いつまでに実施するのか
・どのように進捗を確認するのか

まで具体化することが重要です。

また、中長期計画は法令対応のためだけに作成するものではありません。

物流コスト、輸配送、荷待ち・荷役、物流拠点など、自社の物流課題を整理し、改善施策を継続的に実行していくための「物流改善のロードマップ」として活用することが重要です。

物流中長期計画の策定が求められる背景や、改正物流効率化法における荷主の対応については「改正物流効率化法で荷主に求められること|努力義務・特定荷主の義務を解説」で詳しく解説しています。


改正物流効率化法における中長期計画は、「何を書けばいいのか分からない」と悩みやすいポイントのひとつです。

しかし、中長期計画書に記載する内容は大きく4つの事項に整理されています。

重要なのは、きれいな文章を書くことではありません。

現状を計測し、具体的な数値をもとに「いつ・どこまで改善するのか」を示すことが、実行できる中長期計画をつくる第一歩です。

中長期計画書は、主に次の4つの事項で構成されます。

まず、自社の基本的な情報を整理します。

制度上の対象となる企業として、必要な会社情報や物流に関する基本情報を記載します。

運転者1人・1回の運送あたりの貨物重量を増やすために、どのような取り組みを行うのかを整理します。

配送頻度の見直しや積み合わせ、車両の大型化など、自社の物流実態に合わせて施策を検討します。

トラックが到着してから荷役を開始するまでに発生する荷待ち時間について、現状と改善施策を整理します。

どの拠点で、どの程度の荷待ちが発生しているのかを把握したうえで、目標を設定することが重要です。

荷積み・荷卸し・検品などにかかる時間についても、現状を把握して改善策を計画します。

パレット化や荷役方法の見直しなど、具体的な施策につなげていきます。

つまり、判断基準となる3つの分類が、そのまま中長期計画の骨格になると考えると整理しやすくなります。


中長期計画は、中長期的に実施する措置を記載するもので、計画内容に変更がない場合は5年に一度の提出となります。

一方、提出期限については対象年度によって確認が必要です。

2026年度については10月末が提出期限とされており、2027年度以降は原則7月末となります。

そして、計画を提出して終わりではありません。

定期報告によって、計画に対してどのような取り組みを行い、どの程度改善したのかを継続的に確認していくことになります。

中長期計画は一度作って保管しておく書類ではなく、実行と検証を前提とした計画として考える必要があります。


中長期計画を作ろうとしたとき、

「目標をどう書けばいいのか分からない」
「具体的な数字が決められない」

という問題が起こることがあります。

その原因は、文章の書き方ではなく、現状が計測されていないことにあるケースが少なくありません。

たとえば、

「積載効率を向上させる」

だけでは、具体的な目標とはいえません。

現状値を把握したうえで、

「1回運送あたり8.1トンを、3年後に9.0トンへ改善する」

というように、現在地と目標値を数字で示すことで、初めて進捗を確認できる計画になります。


中長期計画では、抽象的な表現だけで終わらせないことが重要です。

たとえば、

NG例
「荷待ち時間の短縮に努める」

では、どの程度改善できれば目標達成なのか判断できません。

一方で、

OK例
「○○拠点の平均荷待ち時間を、2028年度までに120分から60分へ短縮する」

とすれば、対象・期限・目標値が明確になります。

目標を設定するときは、

「どこで」「何を」「いつまでに」「どこまで」

を数字で示せる状態を目指します。


中長期計画には、目標値だけではなく、その根拠となる現状値が必要です。

現状を計測しないまま目標だけを設定してしまうと、定期報告で、

「どれだけ改善したのか」
「計画に対してどこまで進んだのか」

を説明することが難しくなります。

そのため、中長期計画の作成と同時に、計測方法そのものを設計することが重要になります。


計画を作る段階から、「翌年度に何を報告するのか」を考えておく必要があります。

たとえば、

・1回運送あたりの貨物重量
・荷待ち時間
・荷役等時間
・パレット化率
・予約システムの利用率
・計測できている拠点・便の割合

など、継続的に把握できる指標を決めます。

最初からすべてを完璧に計測するのではなく、継続して同じ基準で確認できる仕組みをつくることが重要です。

物流効率化法に基づく定期報告では、荷待ち時間・荷役等時間の計測結果や改善状況などを報告する必要があります。具体的な報告内容や提出期限、計測方法については、関連記事「物流効率化法の定期報告とは?2026年度の報告内容・期限・計測方法を解説」で詳しく紹介しています。


中長期計画をゼロから考える必要はありません。

国は、製造業・卸売業・小売業・連鎖化事業者などを対象とした中長期計画書・定期報告書の記載事例を公開しています。

自社に近い業種や取り組み状況の記載例を参考にすることで、計画のイメージをつかみやすくなります。

大切なのは、記載例をそのまま写すことではなく、自社の現状値と物流課題に置き換えて考えることです。

参考:国土交通省「物流効率化法について」


中長期計画の目的は、様式を埋めて提出することだけではありません。

現状を計測し、課題を把握して、目標を決める。

そして施策を実行し、定期報告によって進捗を確認する。

このサイクルを回していくことで、中長期計画を実際の物流改善につなげることができます。

「何を書くか」から考えるのではなく、まず「自社の物流が現在どうなっているのか」を把握する。

そのうえで、改善すべき課題と目標、施策、進捗を確認する指標を整理することが、実行できる物流中長期計画をつくるためのポイントです。


・中長期計画に何を書けばよいのか整理できていない
・目標値の根拠が作れず、表現が抽象的になっている
・計画を提出した後、何を報告すればよいか分からない
・自社の物流課題そのものを整理できていない
・様式を前にして、書き出せずに止まっている


・物流中長期計画とは何か
・中長期計画書の主な記載事項と提出期限
・具体的な目標値の設定方法
・定期報告を見据えた計測方法の考え方
・国が公開している記載例の活用方法


「自社では人時生産性を正しく把握できているだろうか?」

「物流改善をしたいけれど、どこから手をつければいいか分からない」

そんな場合は、まず現在の物流課題を整理するところから始めてみてください。

物流コスト・生産性・管理体制など、5つの領域から自社の物流課題を確認できます。


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