

9万トン未満の企業にも、物流中長期計画が必要な理由
改正物流効率化法では、年度の取扱貨物重量が9万トン以上の特定荷主に、中長期計画の作成・提出などが求められます。
一方、9万トン未満の企業には中長期計画の提出義務はありません。
しかし、「義務の対象ではない=対応しなくてよい」ではありません。
すべての荷主が判断基準に基づく努力義務の対象となることに加え、取引先との条件協議や物流コスト、安定した輸送力の確保といった経営上の観点からも、中小企業が物流の中長期計画を持つ意味は大きくなっています。
特定荷主でなくても、物流への対応は必要
取扱貨物重量が9万トンに届かない企業には、特定荷主としての中長期計画の提出義務はありません。
しかし、判断基準に基づく努力義務は、すべての荷主が対象です。
さらに、取引先が特定荷主に指定されている場合、
- 納品条件の見直し
- 荷待ち時間の短縮
- パレット化
- 車両の待機ルールの見直し
など、具体的な協議を求められる可能性があります。
つまり、自社に提出義務がないことと、自社の物流に影響がないことは別の話です。
中小企業が物流中長期計画を持つ「3つの実利」
中小企業にとって物流中長期計画は、法令対応のためだけにつくるものではありません。
計画を持つこと自体に、大きく3つのメリットがあります。
① 運送事業者から「選ばれる荷主」になる
物流を安定させるためには、必要な車両を継続的に確保できるかどうかが重要です。
荷待ち時間が短く、パレット化などによって荷役の負担が抑えられている荷主は、運送事業者にとって対応しやすい荷主になります。
物流改善を計画的に進めることは、単なる効率化だけではなく、将来の輸送力を確保するための取り組みにもなります。
② 物流コストを把握し、運賃交渉に備えられる
物流費を一括りの金額で見ているだけでは、値上げ要請を受けた際に、その妥当性を判断することが難しくなります。
物流費を費目別に整理し、
「何に、どれだけコストがかかっているのか」
を把握することで、値上げの影響や改善余地を具体的に検討できるようになります。
物流中長期計画をつくる過程でコスト構造を整理しておけば、運賃交渉に対しても数字をもとに判断できる状態をつくれます。
③ 取引先との条件協議で主導権を持てる
取引先から物流条件の変更を求められてから対応を考えるのと、自社の物流課題と改善方針をあらかじめ整理しているのとでは、協議の進め方が変わります。
たとえば、
- 納品リードタイム
- 出荷締め時間
- 発注ロット
- パレット化
- 荷待ち・荷役時間
などについて、自社の現状と今後の方針を説明できれば、取引先との協議でも判断しやすくなります。
計画があるだけで、条件協議の主導権は変わります。
中小企業版なら「A4・3枚」から始められる
物流中長期計画というと、大がかりな計画書をイメージするかもしれません。
物流中長期計画の基本的な作り方や、目標設定・定期報告までの流れについては「物流中長期計画とは?作り方・目標設定から定期報告まで解説」で詳しく解説しています。
しかし、中小企業の場合、最初から複雑な資料を作る必要はありません。
まずはA4・3枚程度でも十分です。
1枚目|現在の物流を整理する
まずは現在地を数字で把握します。
たとえば、
- 取扱貨物量
- 物流費
- 荷待ち時間
- 積載率
などです。
「今どうなっているのか」を数字で整理することが、計画のスタートになります。
2枚目|3年後の目標と施策を決める
次に、現在の物流課題に対して、3年後にどこまで改善したいのかを設定します。
そのうえで、
「何を変えるのか」
「どの施策から実行するのか」
を整理します。
3枚目|年度別の実行計画と担当を決める
最後に、目標達成までに行う施策を年度ごとに整理します。
さらに、誰が担当するのかまで決めておくことで、計画を実際の行動につなげやすくなります。
重要なのは、様式を整えることよりも、数字が入っていることです。
新しいシステムを導入しなくても、現状は把握できる
「データがないから計画を作れない」と考える企業も少なくありません。
しかし、物流の現状を把握するために、必ずしも新しいシステムを導入する必要はありません。
すでに社内にある、
- 運賃明細
- 出荷伝票
- 入出庫記録
- 勤怠データ
などを活用することで、現状を把握できるケースがあります。
まずは既存データを集めて、3か月分程度を集計するだけでも物流の現在地は見えてきます。
まず12週間で「計画の骨格」をつくる
最初から完璧な中長期計画を作ろうとすると、なかなか着手できません。
そこで、まずは12週間程度で計画の骨格をつくることを目指します。
最初に既存データを集め、物流の現状を数値化する。
次に、改善すべき課題を整理し、3年後の目標を設定する。
そして、目標達成のために必要な施策・実施時期・担当者を決める。
この流れで進めれば、大規模なシステム投資を行わなくても、中長期計画を形にすることができます。
「義務だから」ではなく、物流を守るために計画する
9万トン未満の企業にとって、中長期計画は提出義務を果たすための書類ではありません。
むしろ、
輸送力を確保する
物流コストを把握する
取引先との条件協議に備える
ための経営ツールとして活用できます。
物流環境が変化してから対応するのではなく、今あるデータから現在地を把握し、数年先を見据えて改善策を決めておく。
それが、中小企業が物流中長期計画を持つ大きな意味です。
こんな悩みはありませんか?
- 特定荷主ではないので、何もしなくてよいと思っている
- 取引先から荷待ちやパレット化の協議を求められた
- 運賃の値上げ要請に、根拠を持って応じられない
- 計画を作りたいが、人もデータもないと感じている
この記事で分かること
- 義務対象外でも物流中長期計画を持つ3つのメリット
- A4・3枚から作れる中小企業版の計画構成
- 手元にあるデータから物流の現状を把握する方法
- 12週間で中長期計画を作り上げる進め方
計画があるだけで、条件協議の主導権が変わる。
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